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福島を「フクシマ」とカタカナで表現されることを福島県人は最も嫌う。日本を代表する農業県である福島県の農産物が、未だに放射能に汚染されているような誤解から風評被害を生む可能性があるからだ。実際には、厳しい検査を全数受けている福島県の農産物は近隣県のものより、むしろ安全である。それでも、福島県人も含めて、かなりの方々が福島県産の農産物を避けるのは、何万年も消滅することはないと言われる放射能汚染土壌の中で育った農産物に対して「未だ3年しか経っていないのに、どうして安全と言えるのか?」という純粋な疑問をもっているからであろう。

そうした疑問に丁寧にわかりやすく答えているのが、中西友子先生が書かれた「土壌汚染」という著作である。東大農学部で放射線照射によって農産物の品種改良に長年携わってこられた中西先生は、同僚の先生方を募って、震災直後から、福島第一原発による深刻な放射能汚染地域に入り、土壌や農作物、家畜の汚染の影響を時系列で調査されてきた。この作業に参加された先生方は、農学部だけにとどまらず理学部、工学部、医学部と多くの専門分野の先生方が手弁当で調査されてきた。しかも、将来のことを考慮して、若い学生は一切同行させず、年配の先生方だけで自ら測定されたと伺っている。

この「土壌汚染」という本を読んで、私は、本当に救われた思いがした。大震災以降、多くの被災地を定期的に訪れているが、三陸沿岸地帯の津波被災地と福島の放射能汚染地域の深刻さは質が全く違う。放射能は、目に見えないからこそ、一層大きな恐怖がつのる。そうした、恐怖に対して、この中西先生たちの調査結果は一筋の光を与えてくれる。結論から言えば、福島で安全な農産物や畜産物を生産することは、きちんとした知識を持てば全く問題ないと結論づけている。そして、そのことをわかりやすく解説してくれている。

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